「車いす」というと、高齢や障害、けがなどで歩くことが難しくなった人が使う福祉用具。
思いつくのは、後ろから誰かに押してもらう「介助式」、自分の手でこぐ「自走式」、そして充電で動く「電動式」の3種類の車いすが一般的です。
でも・・・それ以外にもあるのをご存知でしょうか?
新しいジャンルの車いすとは、「COGY(コーギー)」という足こぎ車いすです。
私は、脳出血で、右半身麻痺の重度障害が残りました。杖で歩けるまでにはなりましたが、長距離の移動が難しいです。
しかし、この足こぎ車いすCOGYと出会って、さまざまな場所へ出かけるようになりました。このように車いすユーザーだけでなく、障害者や高齢者、病気などで歩行困難な方にとって、とても画期的な車いすなんです。
足を動かすリハビリとしても使える足こぎ車いすCOGYとは、いったいどのような車いすなのでしょうか?
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足こぎ車いすCOGYとは
今回ご紹介するのは、まったく新しいジャンルの「自分の足でこぐ」車いす「COGY(コーギー)」(株式会社TESS)。
本来、歩くことが難しくなった方のための「車いす」ですが、COGY(コーギー)は「歩くことが難しくなった方でも、自分の意思で、自力で自由に移動できる」車いすとして開発されました。
つまり、動かなくなってしまった足を動かすリハビリとしても利用できる車いすなのです。
COGYの画像はこれです
足こぎ車いすCOGYの特徴
通常ならば両足を揃えて乗せておくフットレスト(足台)は、COGYではペダルになっています。そして、シート(座面)は深く座れるよう、少し斜めになっています。
手は充分に使えなくても、片手のどちらかで動かしやすいハンドルは、ハンドブレーキと一緒になっており、まるで自転車感覚で乗ることができるのです!
これがCOGYの主な特徴。
一般的な車いすは、椅子の両側に自転車に似た車輪が1対、足元にキャスター(自在輪)が1対の、計4輪ですが、COGYは椅子の前方に車輪1対、後方にキャスター(自在輪)1対。
さらに後方中央に車輪が1つの計5輪で、その場でぐるりと回転できる小回りの良さも特徴の1つ。
COGYの紹介動画もありますので、こちらを見てみるとイメージがわくかと思います。
COGYの特徴
- フットレストがペダルになっている
- わずかな力でペダルがこげる
- シートは深く座れるよう、斜めになっている
- ハンドルは片手で操作できる
- 小回りがいい
- リハビリにも使える
足が動くようになるリハビリの枠を超えた車いす
もともとCOGYは、リハビリを目的に開発されましたが、今ではリハビリだけでなく、ご自身の行動範囲を広げるために使っている方も増えています。
例えば、
- 脊髄損傷の両足麻痺
- 脳血管障害で片半身麻痺
- 脳性麻痺
- 変形性関節症
- 関節リウマチ
などのような障害、病気で、足が動かない・動きづらくなったことで、なかなか積極的に日常生活を送れなくなった方への「リハビリ」機器としても活躍しています。
もちろん人によって効果はさまざまですが、洗面台で歯を磨いたり、トイレに行けるようになったという方まで!行動できる範囲が広まり、コミュニケーションが増えて、精神的な面でも効果があったという声もあります。
どんなリハビリの仕組みになっているのか?
500mlのペットボトルをペダルに置くと動き出す、軽快なCOGY。その開発を進めたのは、東北大学医学部の半田康延名誉教授のチームでした。
歩行困難者への身体機能回復や生活支援のために、1998年から様々な研究・実証が行われ、2009年から本格的な臨床でのトライアルを開始。産官学連携で、同年株式会社TESS(宮城県仙台市)により発売されました。
半田康延名誉教授によると、以下のような仕組みで歩行が困難になってしまった方のリハビリにも効果があるとおっしゃっております。
通常、人が歩行するときは、脳からの信号が脊髄を介し足を動かしています。しかし、足が不自由な方は、脳からの指令がうまく足に伝わりません。
COGYに乗った方の足が動くのは、脳からの指令ではなく、右足を動かしたあとは左足という反射的な指令が、脊髄の「原始的歩行中枢」からでていると考えられます。
つまり、片方の足がわずかでも動けば、反射的な指令によって、もう片方の麻痺していた足が動くというわけです。感覚神経の情報が、脳や脊髄の中枢神経回路網をうまく調整してくれる。これを私たちはニューロモジュレーションと呼んでいます。
引用:COGYHP
ステップとしては、以下の3つの流れになっております。
- わずかな力をかけるだけでペダルが前に出る
- この動きが「原始的歩行中枢」を刺激
- もう片方の足が反射的に動く
これによって、前へ、そして自在に、自由に「行きたいところへ行ける」ようになるのです。
モーニングCROSSのDEEPコレクションというコーナーでも取り上げられたものを紹介します。
COGYユーザーとしての感想
足こぎ車いすCOGYを一言で言ったら
私は、脳出血を発症して、右半身麻痺の重度障害が残りました。身体障害者手帳第二種二級(右上肢機能障害・右下肢機能障害)
いままでリハビリの生活で、ゆっくり杖で歩くことは出来るようになったけれど、どれだけ歩けるようになっても、「走る」ことはできなかったんです。
でも、COGYは健常者と同じスピードで歩き、風を切って走ることもできる。下手したらぶっちぎっちゃうこともある。それが楽しい!
それで、今年2019年は、COGYで11/10(日)の横浜マラソン車いすの部(2Km、介助者つき)に仲間と挑戦することになりました。マジで健常者の友人とCOGYで出場します(笑)
COGYに乗ると、すべてを自分の力で動かすので、家を出て帰ってくると、達成感で嬉しくなる。「ああよくやった!」と自分をほめちゃう。
何より、乗るとなぜか笑顔になるんですよね。顔を上げて前を見なきゃいけないからなのかな?
珍しいからか、街でもすれ違う人に「これは何ですか?」と聞かれることも多いので、いろんな人とコミュニケーションが取れる。
それもまたCOGYの特長のひとつだと思います。
COGYチームでマラソン大会にも
COGYは別名「あきらめない人の車いす」。障害や病気が原因で、歩行困難となってしまった方ができることが増えていく快感を体感してもらいたい。
車いすに乗ることで、あなたの足を動かすきっかけになれないか。そんな思いで開発された足こぎ車いすCOGY。
- 脊髄損傷
- 片麻痺
- パーキンソン病
- 関節リウマチ
- 義肢
など、その方の病状や状態に合わせて乗ることができるよう、補助具もさまざまに用意されています。
できなかったことができるようになると、人は嬉しいもの。「動かなかった足が動く!自由に移動できる!」事実は、またその一歩先へとペダルを踏み込みたくなる。もっともっと動きたくなる。いろんなところへ行ってみたくなる!
その積み重ねで、COGYでホノルルマラソンや横浜マラソンに出場する人も増えています。
第35回岩手山ろくファミリーマラソン(岩手県雫石町)では、「COGYの部」まで作られました。
どんどんCOGYを使って、いろいろなことにチャレンジしている方が増えてきております。
まとめ
いかがでしたでしょうか?常識をくつがえす「足でこぐ車いす」COGYは、リハビリとして使えるだけでなく、ご自身の行動範囲を広げるためにもすごく役に立つものです。
軽く走るCOGYは、風を切る楽しさを蘇らせてくれます。
この画期的な車いすを普及するために、ただいまCOGYユーザー会を中心にクラウンドファンディング実施しております。
ぜひ歩行困難な方の行動範囲を広げるために、応援をしていただけると嬉しい限りです。
「足こぎ車いすを普及させて、車いす生活を余儀なくされた人々へ希望を与えたい!」(一般社団法人シンクロプラス)
私自身、COGYのおかげでいろんなところへ行けるようになり、なんといっても自分の力で車いすをこげるようになる体感は、本当にいいものです!
できないことが増えていく高齢や病気、障害の方へ、あきらめないでトライすることを伝えてくれる「COGY」、出会ってみませんか。
そしてその先の生活を、夢から現実に変えていきませんか。
堀江 奈穂子
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