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白杖SOSシグナルを使用した事例~知ってほしい白杖と白杖SOSのこと~

ベンチに立てかけてある白杖

視覚障害者の安全な歩行にとって欠かせない白杖(はくじょう)。この白杖について、あなたはどのくらい知っているでしょうか?

 

街ですれ違う白杖を持った人を見て、「目が見えないんだな」となんとなく認識している人はたくさんいると思います。

 

なかには、「白杖って何て読むのだろう?」と読み方を知らなかったり、「あの白い杖は、足が不自由だから持っているのかな?」と勘違いされている人もいます。

 

リコ
本記事では、視覚障害・弱視(ロービジョン)と聴覚障害(難聴)のライターであるリコが、皆さんに知っておいてほしい白杖のあれこれについてまとめました。

視覚障害者にとっての白杖の大切さ

白杖とは、身体障害者福祉法で『盲人安全つえ』と明記されています。しかし、広く認知されて使用されているのは、『白杖』という言葉です。

 

白杖は、目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)が、道路を通行する際に構えていなければならないと、道路交通法第十四条で定められています。

 

以下、道路交通法第十四条。

 

第十四条 目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。以下同じ。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める盲導犬を連れていなければならない。
2 目が見えない者以外の者(耳が聞こえない者及び政令で定める程度の身体の障害のある者を除く。)は、政令で定めるつえを携え、又は政令で定める用具を付けた犬を連れて道路を通行してはならない。

 

目が見えない者は全盲、目が見えない者に準ずる者は弱視(ロービジョン)のことですね。さらに、視覚障害以外の者も、目が見えない者に準ずる者であれば、白杖を使用し道路を横断することが義務付けられています。

 

リコ
このように、白杖は全く目が見えない全盲と、少しは目が見えている弱視(ロービジョン)とその他必要な人が持つことになっていますが、「白杖と言えば全盲だけだよね」と勘違いしている人も多くいるのが現状です。

 

▼参考▼

視覚障害者への声掛けや接し方まとめ!駅で視覚障害者と出会った時の誘導方法とは?

 

白杖の役割って?

白杖には、白杖を持つことによって、自分が視覚障害者であることを周囲に知ってもらう役割があります。全盲同様に、目の見えづらさを抱える弱視にとってもこれは非常に重要な役割を果たします。

 

弱視は、白杖を持って歩く人もたくさんいますが、持たなくても歩ける人も多くいます。私も白杖を持たなくても歩くことができます。しかし、白杖を持っていないと、視覚障害者であることが周囲からはわかりません。

 

白杖歩行の歩行訓練をしっかりと受け、白杖を持って歩行することによって、視覚障害者本人の身を守ることはもちろんのこと、周囲の人々の安全を守ることにも繋がります。

 

そのため、目が見えない者(全盲)と目が見えない者に準ずる者(弱視)は、白杖を携行する義務があり、車両を運転する者は、白杖を持つ者に対して特に安全に配慮することを、道路交通法第十四条では義務付けられているのです。

 

 

白杖の役割として、先ほど挙げた周囲に視覚障害者であることを知ってもらうことの他に、白杖による触覚を通じて路面の状況を収集することや、路面上にある障害物を検知することが挙げられます。

 

目が見えない・見えづらい状況で歩くとき、道路上には危険がたくさんあります。

 

リコ
私自身、白杖を使用していないときに、階段の段差に気づかず転びそうになったり、電柱や看板にぶつかって痛い思いをしたことが何度もあります。

 

白杖には、そうした危険を瞬時に理解し、危険から身を守るための役割があるのです。

 

白杖を持つことに対する葛藤

視覚障害者にとって、非常に重要な役割を持っている白杖ですが、白杖を持つことに対して葛藤がある人は少なくありません。私もその一人です。

 

リコ
「私には視覚障害があります」

 

と何も言わずとも周囲に理解してもらうことは、良いことばかりではなく、ときには嫌な想いをすることもあるからです。

 

「かわいそうだね」と呟く人がいます。「かわいそう」という言葉を投げかけられて嬉しい人がいるでしょうか。

 

「あの人、見えている感じだけど、嘘つきなの?」

と心無い一言を放つ人がいます。

 

見えているように歩けてしまう視覚障害者は、たくさんいます。

 

実際に、視覚障害者と歩くと足の速さに驚いたという声をよく聞きます。障害物を上手くよけ、足早に歩く。それは、視覚障害者が自然と身につけたスキルです。

 

また、見えているように思われる原因の一つに、全盲も弱視も、スマホの音声で道を確認しながら歩くことがあります。これは歩きスマホと誤解されがちですが、視覚障害者にとっては大事なことなのです。

 

視覚障害者が白杖を持って歩いていると、本人も知らぬ間にその姿を撮影され、インターネット上のSNS等に載せられることがあります。そうした問題も、白杖歩行をためらう人がいる理由の一つです。

 

 

白杖を持つ主人公に共感が集まり励まされた

2021年に日本テレビ系で放映された【恋です!~ヤンキー君と白杖ガール】でも、主人公のユキコが白杖を持つことに対して葛藤する場面が描かれていました。

 

また、デートをするときには、白杖をカバンにしまう場面も、視覚障害者のリアルな心理描写として共感を集めました。

 

「デートをしているのに、誘導してもらっているように思われたくない!」

 

主人公ユキコはそんな風に思ったのでしょう。視覚障害者である前に、一人の女の子であるユキコの感情の描写は、私たちの心の葛藤を上手く描いていました。

 

ユキコが葛藤しながらも、白杖を持つことを決意し、一歩ずつ前を向いて歩いて行く姿は、多くの視覚障害者に共感と勇気を与えました。

 

リコ
ユキコよりもだいぶ年上の私ですが、あのドラマをきっかけに「もっと堂々と視覚障害者として胸を張って生きよう!」と力が湧いてきたのを覚えています。

 

堂々と白杖を持って歩いて行こう

優しい親切や暖かい言葉に元気をもらう日もあれば、落ち込む言葉がずしりと心を重たくする日もある。

 

胸を張って白杖を持って歩ける日もあれば、「もう白杖なしで歩きたいよ」と思うこともあるのです。

 

白杖を持って歩いていると、優しい気持ちになる経験だけじゃなく、悲しい経験をすることを当事者は知っているからこそ、白杖を持つ勇気がわかないこともあるのです。

 

視覚障害者一人ひとりが、堂々と胸を張って白杖を持って歩いて行けるようになるには、本人の自信と周囲の理解が必要不可欠。

 

リコ
まずは、知ってもらうことから始めたい、私はそう感じています。

 

 

みんなに知ってもらうことから始めよう

視覚障害や白杖のことを知ってくれる人が一人でも増えれば、上記のような周囲の人々の行動や発言も減るかもしれません。

 

白杖を持つ必要のある人について、視覚障害者がスマホを持ちながら歩く理由について、知っているのと知らないのとでは見かけたときの気持ちや行動が違うはずです。

 

では、白杖についてどれほど認知されているのでしょうか。白杖について周囲の人々が知らないことは大変危険なことだなと感じた話を、先日同行援護従事者(ガイドヘルパー)の友人から聞きました。

 

白杖SOSシグナルを使用した視覚障害者の話

ある視覚障害者の女性が白杖を携行しながら道路を横断していたときのことです。横断している途中で信号が赤に変わりました。

 

その方は、びっくりして白杖を上に持ち、白杖SOSのポーズととったのですが、そこにいた車は一斉にクラクションを鳴らし続けるだけだったのです。

 

女性はどれほど怖い思いをしたでしょうか。青だと思って歩いていたら赤で、一斉にクラクションを鳴らされる。

 

怖くて声も出なくて、何とか白杖SOSを思い出して、ポーズをとるも、誰も気づいてくれない。見えていれば、慌てて逃げることができても、見えていないとそうもいかないことがあります。

 

ラクションを鳴らした人たちは、白杖のことを理解していたのでしょうか。白杖のことは理解していても、白杖SOSのことは理解していなかったかもしれません。

 

白杖SOSってなに?

ここで、「白杖SOSってなに?」と思った方もいるかと思います。

 

白杖SOSとは、両手に白杖を持って、上に掲げるポーズをすることによって、周囲に「手伝ってほしい」「助けてほしい」と知らせるサインのことです。

 

この白杖SOSのポーズ、実は視覚障害者の間でも使用することに対して賛否両論があり、使用したことがない人も多いのです。

 

その理由としては、声に出して伝えることができる人も多いことや、認知度が低いことが挙げられます。白杖SOSを掲げなくても、「道に迷っているので教えてください」「助けてください」と伝えることができる人にとっては、白杖SOSの必要性を感じないでしょう。

 

また、世間に浸透していない白杖SOSを使っても意味がないと考える人もいるでしょう。

 

いざというときのために知っておこう

賛否両論がある白杖SOSですが、先ほどの道路上での非常時に女性が使用したように、助けてほしいときに、驚いて声で伝えることができなくてもとっさにサインを出すことができます。

 

最初に、本記事で車両を運転している者は、白杖を携行する者に対して特に配慮が必要だという道路交通法の定めもあるとお話しました。

 

リコ
この事例では、まずは白杖を持っているから視覚障害者であることを認識すること、そのうえで白杖SOSを理解しすぐに助けてあげることができたら、車両者にとっても視覚障害者にとっても安全だったのです。

 

白杖SOSを使用するかどうかは、視覚障害者本人が判断すべきことですが、その方法について知っておくことは何かの時に役立つはずです。声で手助けしてほしいと伝えられるときには声で伝える、声で伝えることができない場合は、白杖SOSを使って伝える、どちらの選択肢もあったほうが危険から身を守ることができるのではないでしょうか。

 

また、視覚障害者ではない人たちも、視覚障害者が白杖を使用する意味や、白杖SOSとはどんなサインなのか知っていただける人が増えたら私たち視覚障害者は今よりもっと安全に街を歩けると思うのです。

 

白杖SOSの対応方法

 

白杖SOSシグナルまとめ

視覚障害者にとって、安全な歩行に欠かせない白杖。

 

私たち視覚障害者は、色々な想いを抱えながら、今日も白杖を持って歩いています。

 

白杖を持つ人、白杖を持つ意味、白杖SOSについて、一人でも多くの人が知ることによって、視覚障害者は今よりもっと安心して外出することができるようになります。

 

リコ
誰もが安心して安全に街を歩ける社会が当たり前であることを、私は願っています。

 

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先天性の弱視難聴の女性です。現在小学生の子どもを育てています。文章を書くことが大好きで、ここ数年は弱視難聴のことや子育てのことをテーマに、エッセイを書き続けています。当事者の視点を大切にしながら、福祉について考え学び、今後はライターをはじめ、福祉に関わる活動を幅広く続けていきたいと思っています。趣味は、ドラマ・映画鑑賞や、カフェや雑貨屋さん巡り、家族や友人と旅行することです。見えにくくても、美しい自然の中を歩くことが大好きです。
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